一路功名図
樹上から水面をのぞき込む一羽の白鷺。その頭上を白頭翁(シロガシラ)が飛んでいます。「鷺(lù)」と「路(lù)」の音通から、一羽の鷺で「一路」を意味しています。白頭翁は頭頂部の白さから白髪、すなわち長寿を表しています。「一路功名到白頭之句 繍江熊斐補圖」の落款から、ただ一筋に功名を志し、立身出世して、長寿となるという、人生の成功の路を歩み続ける吉祥性が込められている作品です。水面をじっと見つめて獲物を狙う凛々しい白鷺は、まるで手柄を立てて栄進を求める姿のようにも理解できます。「沈南蘋画図百幅」にも挙げられる典型的吉祥画題です。なお、尾張徳川家では宝暦3~4年(1753-54)頃に8代・宗勝が長崎奉行を通じて、熊斐に絹本の花鳥画屏風1双及び掛幅3幅を注文したことが熊斐「猛虎震威図」(徳川美術館蔵)附属文書から判明します。「一路功名図」も尾張徳川家伝来で、12代・斉荘の娘である利姫が広島浅野家10代・慶熾に嫁いだ際の婚礼道具とされました。
【長崎ゆかりの近世絵画】
【長崎ゆかりの近世絵画】
名称 | 一路功名図 いちろこうみょうず |
作者名 | 熊斐筆 ゆうひ (1712-1773) |
時代 | 江戸時代、宝暦4年頃/1754年頃 |
材質 | 絹本淡彩 |
サイズ | 117.3×46.2cm |
員数 | 1幅 |
その他の情報 | 落款:「一路功名到白頭之句/繍江熊斐補圖」 印章:「熊斐印」(白文方印)「淇瞻」(朱文方印)「興到筆隨(下2文字欠)」(遊印、白文長方印) 来歴:1986神戸市立博物館 参考文献: ・広島県立美術館特別展『入城400年記念 広島浅野家の至宝』図録 2019 ・神戸市立博物館・長崎歴史文化博物館特別展『我が名は鶴亭』図録 2016 ・神戸市立博物館特別展『コレクションの精華』図録 2008 ・神戸市立博物館特別展『花と鳥たちのパラダイス』図録 1993 |
指定区分 | |
分野 | 日本画 |