文化財保存
かけがえのない文化財を現代で活用するだけでなく、後世に末永く伝えていくことは、博物館の大切な使命のひとつです。文化財を脅かすものは、天災・人災ばかりではありません。特に、温暖多湿な日本では、害虫や菌類による生物被害も深刻です。
神戸市立博物館では、文化財を守るための設備を整えるともに、IPM(総合的有害生物管理)の手法を積極的に導入し、展示・収蔵の監視と管理を日常的に行うことで、理想的な文化財保存環境の維持に努めています。
また、文化財の状態に応じて、修理(補修)を適宜行うことで、よりよい状態で未来へ守り伝える活動を行っています。
保存環境の整備
文化財は温度・湿度の安定した収蔵庫で保管しています。収蔵庫は、自然災害の影響を受けにくい位置に設置されており、1995年の阪神・淡路大震災の際も、文化財の破損をごく僅少に抑えました。
展示環境の整備
貴重な文化財を公開する展示室についても、収蔵庫と同様の文化財保存のノウハウを適用しています。展示室内はLED照明を使用し、温湿度は文化財に応じた適正な数値に保たれています。
環境モニタリング
展示室・収蔵庫では常時、温湿度をモニタリングしています。また、定期的な清掃を実施しています。毎年温暖期には館内全域を対象に、フェロモントラップやエア・サンプラ-などによる環境調査を実施しています。また、収蔵庫では粘着トラップ(捕虫器)を常時配置し、虫類の発生の有無を監視しています。
資料受入時の処理
購入・寄贈・寄託等により、博物館に新たに受け入れられた文化財は、殺虫・殺菌処理を行った後に、はじめて収蔵庫に納入しています。燻蒸処理に適さない文化財については特殊樹脂袋への密閉・脱酸素処理なども適宜行います。
修理
一般に、文化財は50~100年に一度のスパンで修理することが望ましいと考えられています。当館では所蔵品の状態確認を定期的に行い、修理計画の策定に努めています。文化財修理に習熟した専門業者の手によって、所蔵品の修理を進めることで、少しでもよりよい状態で、未来の世代へと引き継ぐ活動をしています。