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研究紀要

研究紀要:第4号(1987年)

執筆者 論題 要旨
岡泰正 ヴイテ・レーウ号積載の芙蓉手磁器について -17世紀初頭におけるV.O.C.交易 本稿は1613年にセント・ヘレナ島ジェームズ湾で沈没したオランダ東インド会社商船の積荷引き揚げのドキュメントを訳出し,その工芸史上の意義をを考察したものである。その沈没船の歴史的背景とたどった航路を紹介し、くわえて17世紀初頭の芙蓉手という中国磁器輸送の貴重な基準例と位置づけ、日本出土の芙蓉手との関わりを指摘している。
三好唯義 南波コレクション中の刊行諸国図について 江戸時代にはさまざまな地図が刊行されるが、17世紀初頭には国別の絵図が出版されるようになる。筆者はこれらを諸国図と分類し、資料を整理する過程で判明した事項を報告している。南波コレクションでは、諸国66カ国に壱岐・対馬を加えた68カ国中36カ国に刊行図が見られること、畿内・東海道・東山道の諸国に多く見られること、それを出版した版元はその8割が三都(江戸・大坂・京)に集中していること、刊行の時期は江戸時代後期に多いことなどを報告している。これらはおそらく諸国図刊行の趨勢と判断してよかろう。そして対象にした142図を一覧表にして示している。
問屋真一 十六-十七世紀初頭の摂津国兵庫津史料-タル井家文書の紹介- タル井家は江戸時代、兵庫津小物屋町(神戸市兵庫区本町)に居を構える有力商家で、正直屋と号し、岡方の名主を勤める名家であった。井家文書は早くから知られ、その一部は翻刻されているが、本稿は新出の史料を含む42点を翻刻し、(1)室町時代滅亡まで、(2)文禄3年まで、(39文禄3年以降にわけ、分析して紹介している。この時期は史料の不足から研究が進んでいないが、正直屋が果たした役割と兵庫津の動向、とくに豊臣政権下の蔵入地支配との関係について素描を試みている。