執筆者 |
論題 |
要旨 |
田井玲子 |
A.H.グルーム 1 一在日50年に及ぶ一人のイギリス人の足跡一 |
1868年の開港以来、数多くの外国人が神戸を拠点に活躍した。当館研究紀要第5号で紹介したイギリス人バガレーのように、一定期間日本で仕事をして相応の財産を築いた後帰国する外国人が多かったが、日本女性と結婚して家庭を築き、神戸に眠る人々もいる。イギリス人グルーム(Arthur Hesketh Groom)もそのひとりである。
彼の業績のなかでは、明治28年(1895)六甲山上に別荘を建て六甲山開発のいとぐちをつくったことや、日本最初のゴルフクラブ・神戸ゴルフ倶楽部の創設 (1903年) がよく知られているが、外国人の自治組織・居留地会議の委員をつとめ、在留外国人の代表的なスポーツクラブ、神戸レガッタ・アンド・アスレチック倶楽部の創設 (1870年) 、春日野外国人墓地の設置 (1899年) など公共的な活動にも尽力した。
開港まもない神戸に来航して、大正7年(1918)に亡くなるまで在日50年に及ぶ彼の足跡は、神戸の近代のあゆみを物語る。 |
三好唯義 |
J.ブラウの1645/46年版世界地図について |
特別展「栄光のオランダ絵画と日本展」に出品されたJ.ブラウの1645/46年版世界地図(ロッテルダム海事博物館蔵)を資料紹介したもの。本資料は、オランダのいわゆる黄金時代(17世紀)を象徴する大型壁掛け世界地図であり、オランダの至宝ともいうべきもの。筆者はこの地図を詳細に解説した文献を翻訳し、展覧会カタログの限られた解説を補足しようとした。また、本地図は地球を含む宇宙全体を示すマンダラであるとし、17世紀オランダ地図学の特色を記している。そして、地図周囲の王侯図などは、近世の初期洋風画に密接な関係があるため、それらの写真と地図の内容がわかる模式図を提示し、他の研究者への情報提供をしている。 |
中村善則・問屋真一 |
石峯寺如法大般若経について |
神戸市立博物館が1986年から調査した石峯寺(神戸市北区淡河町神影)所蔵の大般若経600巻の調査報告。鎌倉時代末期の書写経で、一部補写経を含む(他に明治期の補写経39巻)。改装時の錯簡を復元し、66巻に見える奥書、料紙の幅などをもとに、書写事業の過程を検討し、5名の執筆僧の関わり方について考察している。また、経櫃や経典奥書に記された如法経としての作法手順を紹介し、如法経と称して書写された意義について言及している。 |