執筆者 |
論題 |
要旨 |
塚原 晃 |
放蕩息子の散財 ―長崎版画《阿蘭陀人康楽之図》と西洋製銅版画との関連を中心に |
本稿は長崎版画《阿蘭陀人康楽之図》と極めて類似した西洋製版画を明示するとともに、18世紀後期から19世紀前期にかけて世界的な広まりと変容をみせた、ある特定図像の系列にこの長崎版画が属することを実証するものである。1751年にセバスチアン・ルクレール(子)画とされるエングレーヴィング、またはこれを1750年代以降に模倣したイギリス製メゾチントなどに描かれる宴会風景は、そのテーブルの配置や人物のポーズが「阿蘭陀人康楽之図」とほぼ同様であり、影響関係が明らかである。これらの銅版画は、ルカ福音書の「放蕩息子」のたとえ話を題材にしたシリーズ物のひとつである。デルフト製陶磁器の絵付にも描かれるなど、この図様は欧州である程度評判を得たと考えられる。さらに上述の銅版画がオランダ船によって日本にも舶来し、18世紀末期から19世紀前半にかけての様々な絵画作品に、この酩酊し抱き合う男女のイメージが転用されている。 |
三好 俊 |
【研究ノート】神戸市立博物館蔵「源平合戦図屏風 一の谷・屋島合戦図」の描写について―『平家物語』関連作品との対照を通じて―
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源氏と平氏の合戦を描いた「源平合戦図屏風」は多くの作例が遺されている。神戸市立博物館においても、狩野吉信筆「源平合戦図屏風 一の谷・屋島合戦図」を所蔵しているが、図中の場面比定が行われた他に、詳細な分析は行われていない。そこで本稿では同図について、主に『平家物語』の記述と図様の差異に注目して分析し、そこから見出される同物語の関連作品の影響について言及し、合戦図研究に資することを目指す。 |
水嶋 彩乃 |
【資料紹介】鷹見保具『雨粟記』 |
神戸市立博物館所蔵の「浜本陣絵屋(鷹見)右近右衛門家文書」に含まれる、『雨粟記』を紹介する。『雨粟記』は、兵庫浜本陣絵屋の鷹見家当主、鷹見保具(謙斎)によって著された随筆で、歌道、茶道にまつわる事柄の他、著名人の言行、奇談、各種教養的な事項を集成する。
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